社長インタビュー:やさしい手ー1
香取 幹氏
株式会社やさしい手
代表取締役社長 香取 幹氏
全4回:1 2 3 4
■第1回(全4回連載)

北上
香取社長が経営者としての極めて高い意識で、新聞の記事に答えられているなという一面をちょっと感じられたところがあったのです。
と申しますのはこういう文章があるのです。
「これからは従来の福祉の考え方から業績中心の考え方に移行していく。ご利用者に対してどれだけ質の高いサービスを提供できるかを徹底的に考えて、数字に反映させる仕組みを構築していく」ということがあるのですけれども、これは従来の在宅福祉サービスの考え方から脱却するという意味にも取れるのですけれども、そのへんのジレンマとか、そのものにどのようなメッセージがあるのかなと思っていまして。

香取氏
前提条件をまず話しますけれども、今までなんとなくサービスをしたということで私も満足していたのですが、ご利用者さんもなんとなくサービスを受けた、決められたサービスを受けておしまいだったのですけれども、私どもとしては今後もっとも重要なパターンとしてはやさしい手でサービスを受けたという形で、元気になったとか、人生が楽しくなったとか、そういった成果。
利用者さんに基づく、利用者満足度を成果主義で考えていくということですね。
お給料が成果主義ということではなくて、ご利用者様に対するパフォーマンスをどのように提供していくのか、ご利用者さんへの提供価値が成果主義だというような形です。
われわれのお給料がもらえるのが成果主義ということではなくて、ご利用者さんにいったいどういう提供価値があったのかというところを、個別に図っていくということが非常に大切な考え方だと思っています。
そういったことのなかでのやはり全社的にそれを行動に展開していくということについては、当然難しい考え方ですので一般的には「そんな難しいこと、できるわけないじゃないですか」とよくお叱りをいただくのですが、そういったことを確実にしていくことを長年にわたって、私どもの会社の皆様方と力を合わせて目標にめがけて努力していくことをやっていくことで、今申しあげた概念というのを私どもの社員の皆様方にもきちんと伝えることができて、そのうえで初めて行動が展開できて、結果的に利用者様にいいサービスが提供できて、そのうえで最終的に成果を上げなければいけない。
いろいろな段階があるわけですがその段階を少しずつ浸透させることができると信じていますけれども。

北上
なるほど。
いうなれば顧客満足度の最大化ということになっていくと思うのですけれども、従来は介護サービスという業界はそういう意識は比較的薄かったのでしょうか。

香取氏
本人が良いと思うか、思わないかということでいうと、それはあったと思うのですけれども、私どものほうから「良い」という概念をまず提案させていただいて、今までご利用者様が気がつかなかった良さというようなところを改めてご認識いただきまして、それを「こういう展開でやらせていただきます」という話をきちっと説明責任のうえでご納得いただいて、「そこまでいうならやってみてください」というような形でそれを実現できるような形で考えていくということを、私どもとしましては十分アポイントとかをさせていただいているのですけれども。

北上
そのなかで非常に大切な部分があると思うのですけれども、数字に反映させていく仕組みというのは、そのサービスの対価に対して誰かが評価していかなければいけないと思うのです。
それは直接利用者様に対して、例えば御社のどこか違う事業部がアンケート調査とか、意識調査とかいうのをやっていくということなのでしょうか。

香取氏
概念的には今の話ですけれども、介護予防でいうと健診という方法があります。
いわゆる測定SF-36という方法論ですとか、都老研式という具体的な数値化のメジャー面とシステムがありますので、そういった形で調査をして具体的にこのような形で上がってきましたよということです。
簡単にいうと健診後、「あなたの体力年齢は67歳です」とかいわれてしまうものと同じようなものですけれども、そのような感じでフィードバックをしていくということです。
介護予防に限っていうとそういうことになると思います。
ご老人においては体力的な、筋力的なものだけではなくて歩行の問題がありますので、そういったところをきちんとご評価していく。
それで成果をご実感いただくということも非常に大切なことだと思います。
いずれにしても事業者さんにおいても、より良い豊かな生活をしていくためにもご利用者様が前向きにお考えいただけるような目標を設定させていただいて、それをともに達成していくような仲間としてお認めいただけるように努力してもらいたいと思っております。

北上
何日か前の日経新聞に介護予防という記事が結構大きく載っていましたけれども、介護予防の浸透率といいますか利用率というのは10%前後だという数字が載っていたのです。

香取氏
それはまだ数カ月分しか動いていませんのでこれからだと思うのです。
今、要介護認定をされているご利用者様とか、毎月新しい認定に切り替わってまいりますけれども、1年でひと回りしないと全員が回りませんので。
一部、1、2割ぐらいで要介護認定の期間が2年ぐらいに及ぶ方もいらっしゃいますので、全員がすべて新要介護認定におきまして介護予防給付の認定を受けるにあたってはまだまだ時間がかかります。
そういう意味では全体の利用者における介護予防利用者の比率はまだ、最終的に全員がひと回りするという状態からはまだほど遠いので、それゆえにまだ10%だという話が大げさといいますか、ちょっとわざとそのようなことも、新聞としても報道意図があってそのように書かれているのではないかと思います。

北上
どちらかというと、さすがに日経だけあってすぐにそういうものと財政を結びつけるような記事の出し方だったので、私も今お話を聞けて「なるほどな」という印象を受けましたけれども。

香取氏
予防給付のことだけ書くというと、予防給付はまだ始まったばかりですしなかなか難しいと思うのです。
介護も予防が始まったばかりですし、医療も予防をスタートしたばかりで、本当にそういうものに財源を投入していいのかという議論を立証していくというのはこれからの話ですので、そういった意味でも私どものような事業者がそういう介護予防における予防の成果というのをきちんとパフォーマンスで上げられるかどうかは、私どもにとっても非常に重要なポイントになってくると思います。

北上
社長がおっしゃっているように、現在訪問介護サービスの売上は若干減った。それを介護予防と介護予防の事業でも展開を、売上を上げていこうというようなことがありますよね。
私どもの単純な考え方としては、おそらく国としても極力介護予防で終わらせたいのではないかというね。
結局、介護の需要が膨れあがってしまうとどうしても財政を圧迫しかねない。
かといって介護事業者に対して手厚く保険料を払うことも難しいというような、結構難しい位置に介護事業者さんはいらっしゃるのかなと思うのですけれども。
そのへんのジレンマというのはいかがなのかなと思うのですけれども。

香取氏
全員がみんな寝たきりになって、全員が要介護状態になればいいのかというとそういうわけではないと思っていますし、そのなかできちんと社会的なニーズを見極めてそれをきちんと供給できる形で利益も出ればこんなにいいことはないわけです。
そういった社会的ニーズを見つけ出して実現していくことが非常に意味があることだと思います。
介護予防とか予防医療という発想で考えていくと、例えば最近メタボリックシンドロームとかの報道がありますけれども、やはりご飯を一生懸命に食べようと思えば食べられますので、やはり自制をきちっとするというところまでも自分で、セルフで面倒をみないと、結局人生の終末期でその人が「自分だよね」というところの部分の、まさに自分の健康は自分で面倒をみなさいというところをきちんと今後しないと。
昔よりも喫煙率も下がってきていますし、そういう自己責任的文化というのは非常に進行してきますし。
気がついている人は長生きするけれども、気がついていない人は長生きできないというような自己選択が可能な形にどんどん世の中が変わってきます。
そのなかで個人、個人が健康に暮らすことに対する知識を深めてそれに向けての努力も求められてくる。
自立という意味では厳しい世の中になってくると思います。
それは本当に必要なことだと、人間が生きていく生命体である限りは、一人ひとりの人間がきちんと頑張って努力していかなければいけなくなるような気がします。
そういった意味での展開の一つが介護予防という発想ですし、自分の人生をどう生きるかというところに自己責任をもつというところの意識がここ20年で発達してきています。
そのなかで今まではどうやって働くかとか、どうやって子育てをするかという範囲で終わっていたのですが、実はその背後にはびこるといいますか、起こっている高齢のリスクについてどのように対応していくのか、健康のリスクに対してどう対応していくのかというのもまさに自分でリスクをきちんと負っていかないといけない。
そういうリスクの文化のような部分をセルフマネージメントしていくことが、今後社会的ニーズとして有効な話になってくると思うのです。
ちょっと難しい話になりますけれども、社会保障制度論のような話になって恐縮なのですけれども。


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